第2章 ヴェニソン商会の令嬢

第2章 ヴェニソン商会の令嬢

第2章 第6節 仲間への誘い

ルストでの初めての依頼こそ散々だったものの、その後のノーヤは驚くほど堅実に成長していた。洞窟での出来事を反省したのか、彼女は簡単な雑用からはじめ、次第に地図作成、素材集め、届け物といった軽い依頼へと領域を広げていった。 ヴェニソン家で培わ...
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第2章・第5節 ノルーニャとの出会い

「……誰だ、お前は?」 ザットが低く唸るように問いかけた。泉の青白い光が、彼の目の奥の焦りを浮かび上がらせる。 猫族の青年は、まるで散歩の途中で立ち寄ったかのように肩をすくめた。 「通りすがりの魔法使いです。」 穏やかな声なのに、空気...
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第2章 第4節 初めての依頼

「さてさてギルドの登録も終わったし……ご飯にしよっと!」 胸の奥がふわっと軽くなる。昨日までの窮屈な毎日が嘘のように、ルストの朝は自由そのものだった。 早朝のナイフ庵には、すでに冒険者たちが集まっており、注文の声や皿の触れ合う音が活気を生...
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第2章 第3節 新しい街へ

夜明け前の薄明かりの中、ノーヤはフェリアから東へ伸びる街道を歩き続けていた。背負った小さなカバンは軽いはずなのに、歩くたびに肩へ静かに重みがのしかかる。それは荷物の重さではなく、十五年過ごした屋敷を離れたばかりの心の揺れだった。 それでも...
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第2章 第2節 わたしの人生

一年が過ぎ、フェリアには例年と変わらぬ穏やかな春が訪れていた。花の香りは相変わらず風に乗って漂ってくる。それでも、ノーヤの心だけは静かに形を変えていた。ローレンから贈られた禁書は、机の上で常に開かれ、何度も読み返されたせいで角が丸くなってい...
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第2章 第1節 ヴェニソン商会の令嬢

春風が、屋根のあいだから軽やかに抜けていく。商業都市フェリアはこの季節になると街全体が色づき、石畳には花びらが舞い、露店は新作の飴細工や布染めを並べて客を呼び込んでいた。甘い香りの混じる春の空気は歩く者の心を自然と浮き立たせるが――ノーヤ・...
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