第3章 “影”と呼ばれる貧困街

第3章 “影”と呼ばれる貧困街

第3章 第5節 新たな旅へ

 魔物を仕留めたあと、ギルドからの報奨金と、あの麻袋に詰まっていた大量の金貨を合わせると、およそ五百万syrになった。帝都ですら、庶民が一年必死に働いてようやく届く額だ。ましてここマリネル、とくに《影》では、一年働いても二百万syrに満たな...
第3章 “影”と呼ばれる貧困街

第3章 第4節 弟の手紙

 夕暮れが迫る港町《マリネル》は、昼の喧騒を名残に残しながら、海と空の境がゆっくりと茜へ溶けていく時間帯に入っていた。市場では片づけの声があがり、潮風に揺れる布が夕光を受けて揺らめく。穏やかな気配が街を包みつつあった、そのときだった。  ...
第3章 “影”と呼ばれる貧困街

第3章 第3節 増税の知らせ

 週の終わり、港町《マリネル》に重い知らせが落ちた。新たな増税である。漁業税と都市保全税が同時に引き上げられ、漁師も商人も、表通りの観光客相手に商う者でさえ顔色を変えた。今回ばかりは「そのうち下がるさ」という軽口すら出ない。街の空気は、潮風...
第3章 “影”と呼ばれる貧困街

第3章 第2節 幼馴染

 貧困街《影》に建つ古びた孤児院は、潮風で軋む木の扉と雨漏りする屋根を抱えながらも、毎朝子どもたちの笑い声で満ちていた。粗末な食堂では小さな椅子がぎしぎしと鳴り、洗濯縄には色あせた服が揺れる。裕福とは言えないが、互いを助け合う温もりだけは絶...
第3章 “影”と呼ばれる貧困街

第3章 第1節 “影”と呼ばれる貧困街

 南方の港町《マリネル》は、一年の半分が夏といわれるほど温暖で、通りには明るい声と潮風が満ちていた。表通りには観光客向けの屋台が並び、果実酒や氷菓の香りが漂い、磨かれた石畳は陽光を受けて水面のように光っている。  だが、その賑わいを一歩外...
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