第2章 ヴェニソン商会の令嬢第2章 第1節 ヴェニソン商会の令嬢 春風が、屋根のあいだから軽やかに抜けていく。商業都市フェリアはこの季節になると街全体が色づき、石畳には花びらが舞い、露店は新作の飴細工や布染めを並べて客を呼び込んでいた。甘い香りの混じる春の空気は歩く者の心を自然と浮き立たせるが――ノーヤ・...2025.12.31第2章 ヴェニソン商会の令嬢
第1章 ― ペンギンとしろくま ―第1章 第5節 北の空に走る光 ― 旅立ちの灯 ― 翌日の昼、雪が薄く積もる明るい通りを、ユキミアはゆっくりと歩いていった。胸の奥には、昨夜古文書から感じた“囁き”がまだ残っている。 スプーン亭の扉を押すと、暖かい空気と食堂の香りがふわりと広がった。奥の席でしろまるがこちらへ手を挙げた...2025.12.31第1章 ― ペンギンとしろくま ―
第1章 ― ペンギンとしろくま ―第1章 第4節 魔物の出現 ― 凍てつく夜の中で ― 夜空を裂いた黒い稲妻の余韻がまだ残っていた。普段なら雪に包まれ、静けさと白光に満ちているユーフロストの街。しかし今夜だけは違っていた。冷たい風が通りを駆け抜け、明かりを手にした人々が通りへ飛び出していく。遠くで鳴り響く悲鳴が、街の静寂を引...2025.12.31第1章 ― ペンギンとしろくま ―
第1章 ― ペンギンとしろくま ―第1章 第3節 古文書の囁き ― 忘れ去られた種族 ― その夜、風が宿の壁をかすかに叩いていた。今夜は珍しく雲が晴れ、月の光が雪の街を淡く照らしている。通りに積もった雪は銀色に輝き、静けさの中に光の粒が漂っていた。人々が寝静まった後も、宿の一室だけは小さな灯りが消えずにいた。 机の上には分厚...2025.12.31第1章 ― ペンギンとしろくま ―
第1章 ― ペンギンとしろくま ―第1章 第2節 スプーン亭の依頼板 スプーン亭の朝は、パンの焼ける匂いとベーコンの焼ける匂いがまじる独特のあたたかさに包まれていた。ここスプーン亭はギルド支部と食堂を兼ねており、冒険者たちにとっては仕事の拠点であり、同時に心休まる憩いの場でもある。木の床を踏む音、氷のカップに...2025.12.31第1章 ― ペンギンとしろくま ―
第1章 ― ペンギンとしろくま ―第1章 第1節 雪灯《ゆきあかり》の街 夜の街は、静かに息をひそめていた。粉雪が舞い、凍てついた石畳には、街灯の灯りがやわらかく反射している。川沿いに並ぶ古い石造りの倉庫と家々の屋根は、琥珀色の光を受けてほのかに輝き、流れる水面には光の帯がゆらいでいた。雪灯《ゆきあかり》が一つ、...2025.12.31第1章 ― ペンギンとしろくま ―
序章【序章】現代の少年と夢の列車 北国の三月末、風はまだ冬の名残を含んでいた。校舎の窓を鳴らすその音には、雪解けの冷たい匂いが混じっている。窓の向こうでは夕陽が差し込み、木の床が温かく輝きを返していた。道場では剣道部の掛け声が最後の余韻を残し、放課後の空気がゆるやかにほどけ...2025.12.31序章