J-REIT市場を4つの数字で読む
指数・利回り・時価総額・売買代金
2026年6月の東証公式データを起点に、市場の大きさと値動きを読み解きます。

「利回りだけじゃなく、市場全体の温度も見てみよう。」
先に結論
2026年6月末のJ-REITは指数1,805.16、予想分配金利回り4.98%。高利回りだけでなく、金利・賃料・売買の厚みを一緒に見ます。
このテーマを、もう一段深く考える
J-REIT市場を見るとき、分配金利回りだけを見て高い・安いと判断しがちです。しかし価格が下がれば利回りは機械的に上がります。高利回りは魅力であると同時に、市場が減配や資産価値低下を警戒しているサインかもしれません。
指数、時価総額、売買代金、NAV倍率、用途別の賃料動向を重ねると、市場全体の位置と個別銘柄の違いが見えてきます。ここでは2026年6月の市場統計を出発点に、数字同士のつながりを読みます。
4つの数字は、別々の意味を持つ
指数は価格、利回りは予想分配金との関係、時価総額は市場規模、売買代金は取引の厚みを表します。
| 指標 | 数値 | 見る理由 |
|---|---|---|
| 東証REIT指数 | 1,805.16 | 市場全体の価格水準 |
| 予想年間分配金利回り | 4.98% | 分配金と価格の関係 |
| 時価総額 | 15.8兆円 | 市場全体の規模 |
| 1日平均売買代金 | 452億円 | 売買の活発さ |
価格が上がると、同じ分配金でも利回りは下がる
予想分配金が年間5,000円、投資口価格10万円なら利回り5%。価格が12.5万円へ上がれば4%です。
高利回り
分配金が多い場合だけでなく、価格が売られている場合にも高くなります。
低利回り
成長性や財務の安定性が評価され、価格が高い場合があります。
比較の前提
用途・財務・分配金の成長性が違う銘柄を、利回りだけで順位付けしないことが重要です。
分配金込み指数で長期を見る
J-REITは分配金がリターンの大きな部分を占めるため、価格指数だけでは実感とずれることがあります。
東証の解説では、2026年3月末時点で分配金なしの東証REIT指数と、分配金込み指数の差が大きく、長期では分配金の寄与が重要とされています。
短期の価格を追うときは価格指数、長期の成果を比べるときは分配金込み指数を使う、と目的を分けます。
ここからが、中級者向けの深掘り
表面の数字を、実際の判断へつなげます。
NAV倍率は、不動産価値に対する市場価格
NAVは保有不動産の時価から負債を差し引いた純資産価値です。投資口価格を1口当たりNAVで割ったものがNAV倍率。1倍を下回れば不動産の解散価値より安く見えます。
ただしNAVは鑑定評価を含み、すぐ同じ価格で売却できる保証はありません。売却費用、税、時間、物件の流動性を考えると、1倍割れだけで割安と断定できません。
2026年1月20日時点では全58銘柄のうち41銘柄がNAV倍率1倍を下回ったと東証掲載の専門家分析で示されました。市場全体の割安感と同時に、銘柄ごとの質の差も価格へ表れていると考えます。
価格指数だけでは、J-REITの成果を過小評価する
J-REITは利益の大部分を分配することで税制上の要件を満たす仕組みです。そのため内部に利益を貯めて成長する株式より、分配金が投資成果の大きな割合を占めます。
長期比較では東証REIT指数だけでなく、分配金を再投資した配当込み指数を使います。価格が横ばいでも分配金を受け取っていれば総収益は増えます。反対に高い分配金を受け取っても価格が大きく下がれば総収益は伸びません。
個別銘柄でもDPUの推移と投資口価格を別々に追い、最後に合算します。分配金利回りの高さだけで順位を付けるより、DPU成長率とNAV成長率を合わせる方が質を捉えやすくなります。
売買代金と投資主体で、価格の動きやすさを見る
2026年6月の1日平均売買代金は452億円でした。市場全体として取引はありますが、小型銘柄では売りたい価格で売れない流動性リスクが残ります。出来高と売買代金は個別に確認します。
J-REITは海外投資家、投資信託、金融機関、個人の需給で動きます。金利や為替の変化で海外資金が一斉に動くと、物件の稼働率が変わらなくても投資口価格は大きく変動します。
短期の価格は需給、長期の分配金は賃料と財務。この二つを分けると、価格下落が買い場なのか、事業悪化の始まりなのかを検証しやすくなります。
金利、海外資金、増資、指数需給が価格を動かします。
賃料改定、稼働率、借換え費用がDPUへ反映されます。
物件競争力、資産入替え、スポンサー力がNAVとDPUを左右します。
強気・弱気、両方の材料を見る
一つの結論へ寄せず、見方が変わる条件を並べます。
高い分配金と賃料上昇
インフレ下で賃料を上げられる用途では、金利上昇を内部成長で吸収できる可能性があります。
国債利回り上昇と借換え
安全資産の利回りが上がり、REITの相対的魅力が低下。借換え費用も遅れてDPUへ効きます。
用途別の差が広がる
オフィス、物流、住宅、ホテルでは賃料改定の速度と景気感応度が異なります。市場平均だけでは判断できません。
実際に資料で確認する項目
月報・運用報告書・決算説明資料を開いたら、ここを見ます。
- 01予想分配金利回り
過去実績ではなく最新予想を使い、減配前提も確認します。
- 02NAV倍率
1倍割れの理由が金利か物件競争力かを調べます。
- 03DPU成長率
売却益を除く巡航ベースの分配金が伸びているか見ます。
- 04用途別データ
空室率、賃料、新規供給を用途と地域ごとに確認します。
- 05売買の厚み
個別銘柄の売買代金と時価総額を確認します。
ここまで読んだ人へ
市場統計は買い時を直接教えるものではありません。現在の価格がどのリスクを織り込んでいるかを考える土台です。
まず市場平均を知る。次に用途別へ分ける。最後に個別銘柄のDPU・NAV・財務へ降りる。この順番なら高利回り銘柄へ飛びつく失敗を減らせます。
数字と一緒に確認したいこと
- 1
予想分配金は保証されず、下方修正される場合があります。
- 2
時価総額が大きくても、個別銘柄の売買が十分とは限りません。
- 3
指数全体が安定していても、用途別・個別銘柄の差は大きくなります。
集計・計算について
市場数値は東京証券取引所『月刊REITレポート(2026年6月版)』の2026年6月30日時点。売買代金は同月の1日平均です。
出典・確認先
数値は記載した基準日時点です。掲載内容は情報提供を目的とし、特定商品の購入・売却を勧めるものではありません。過去の実績や試算は将来の成果を保証しません。