知っておきたい成長テーマ

自動運転って何?
どこまで進んでいるの?

日本でも始まった、運転者のいない移動サービス。
海外の実例から、私たちの暮らしのこれからを考えます。

約10分

310、ポッケ、AI-Rが未来のタクシーを見に行くイメージイラスト
登場する車両・場面は解説用のイメージです。

「目的地を選んだら、あとは車に乗っているだけ」。そんな移動ができるようになったら、通勤や買い物はどう変わるでしょうか。免許を返納した後も、家族に送迎を頼まず出かけられるかもしれません。

自動運転は、すべてが遠い未来の話というわけではありません。日本でも限定されたルートでは運転者のいないサービスが始まり、海外には街中で無人タクシーを呼べる地域があります。ただし、どんな車でも、どこでも使える段階ではありません。

まず押さえたいこと

自動運転は、場所や条件を絞りながら
暮らしの中に入り始めています。

車に何を任せられるのか。日本と海外はどこまで進んでいるのか。事故が起きたら誰が責任を負うのか。順番に見ていきましょう。

日本の無人移動サービス開始海外のサービス展開

01

自動運転は、車が周囲を見て判断し、操作する技術

人は運転するとき、信号や歩行者を見つけ、止まるか進むかを判断し、ハンドルやペダルを操作します。自動運転では、この一連の仕事をカメラやセンサー、コンピューターが担います。

ただし、車に任せられる範囲は同じではありません。人とシステムの役割を整理したものが「自動運転レベル」です。分類上、自動運転と呼ぶのはレベル3から。レベル2までは人が運転するための支援です。

レベル2では、車がハンドル操作と加減速を支援していても、人は周囲を見続け、必要ならすぐに操作します。レベル3では一定の条件下でシステムが運転を担いますが、交代を求められたら人が引き継ぎます。

レベルの境目は、人が担う役割
レベル車ができること人の役割車・サービスの具体例
2
運転支援
ハンドル操作と加減速の両方を支援常に監視。必要ならすぐ操作日産の「プロパイロット2.0」など。テスラの一般オーナー向け運転支援もここに入ります。
3
条件付き自動運転
条件内ではシステムが運転常時の監視は不要だが、交代要求に対応ホンダ「レジェンド」の専用装備にある渋滞運転機能。2021年に登場し、高速道路の渋滞時など一定の条件で作動します。
4
条件を限定した自動運転
条件内では緊急時の対応もシステムが担う運転者は不要。乗客として利用日本では福井県永平寺町の無人移動サービス。海外では米国ウェイモの無人タクシーなど。いずれも運行範囲が決まっています。
5
完全自動運転
人が運転できる幅広い道路・条件で運転を担う運転者は不要実用化に向けた将来の段階。一般の人が利用できる実用例は、まだありません。

※レベルは、その車で使う機能と作動条件に対応します。レジェンドの例は「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」搭載車の渋滞運転機能です。車種が同じでも、装備や作動中の機能によって人に求められる役割が変わります。テスラの運転支援と無人タクシーについては、後半で詳しく紹介します。

日産:プロパイロット2.0テスラ:一般向け運転支援ホンダ:レジェンドの渋滞運転機能永平寺町のサービス

レベル0は運転の自動化なし。自動ブレーキなど瞬間的な支援は含みます。レベル1はハンドル操作か加減速の一方を継続的に支援します。「レベル2+」「2++」「4+」は、0〜5とは別の正式な段階ではありません。

「真の自動運転」を、乗る人が運転から解放されることと考えるならレベル4が境目です。ただし、走れる地域、道路、速度、天候などの条件が付きます。

※こうした使用条件の範囲は「運行設計領域」と呼ばれ、英語の略語でODDと表記されます。

例えば、ある町の決まったルートを走るレベル4と、広い範囲を走れるレベル2では、得意な仕事が違います。数字だけで「どちらが優秀か」は決められません。レベル4も、条件を外れたら無理に走り続けず、安全に停止するなどの対応が必要です。

米道路交通安全局:自動化レベルの説明

02

日本でも始まっている。これからは使える地域を広げる段階

日本でも、運転者を置かない自動運転はすでに始まっています。2023年5月21日には、福井県永平寺町で運転者を配置しない国内初のレベル4移動サービスが始まっています。まずは決まったルートで実用化され、利用できる場所を少しずつ広げているところです。

国交省:永平寺町の運行開始

  1. 限定ルートでレベル4が実用化

    永平寺町で国内初の運転者なしの移動サービスが開始。

  2. 一般道も含む自動運転の国際基準が合意

    レベル3・4を含むシステムが対象。国交省は2027年1月頃の発効を予定と説明。国交省発表

  3. 日産などがサービス事業化を目指す

    日産は遠隔監視設備を備えたレベル4の移動サービス提供を目指す。利用できる地域や時期は、各サービスの計画に沿って決まります。日産の計画

  4. 国内の自動運転サービス車両1万台

    政府が2026年に公表した計画で、2030年度までに目指す台数。政府ロードマップ

ここでいう2027年度は、2027年4月から2028年3月までです。実際に利用できる時期や場所は、今後の案内を待つことになります。

町の無人シャトルに乗客として乗る310とポッケ、停留所で見送るAI-Rのイメージ
まずは地域や用途を決めたサービスから。運行を見守る人や、利用者を助ける人もサービスを支えます。場面はイメージです。
03

ティアフォーは「自動運転を使える形にする」会社

ティアフォーは、自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発を主導しています。ソフトを基盤に、自動車メーカーや交通事業者と組んで、車両と運行サービスへの導入を進める会社です。

2026年3月には、AI(人工知能)を使ったレベル4向けソフトウェアを公開し、東京・米国・ドイツでの試験走行を発表しました。この試験では安全要員が同乗し、実際の道路で動きを確かめます。運転者なしで利用者を運べるようにするための開発段階です。

ティアフォー:AIベース型自動運転の発表

国内ではタクシー事業などを手がけるnewmo(ニューモ)と協力し、大阪府内での自動運転タクシー事業化を目指しています。また、お台場・西新宿での試験運行の経験を生かし、2027年度までに新しい地域でも短期間でサービスを始められる仕組みづくりを目指しています。

ニューモとの協業実証と地域展開の計画

04

自分の町で使えるようになるまでに必要なこと

地域が変われば、道幅も交差点の形も、雪や雨の降り方も変わります。車両の安全性を確かめたうえで、その地域のどこを、どんな条件で走らせるかを決めていきます。

車が途中で止まったら誰が駆けつけるのか。乗客が困ったときは、どう連絡するのか。こうした対応を用意することも、サービスを始めるための大切な準備です。

政府の「モビリティ・ロードマップ2026」は、今後の交通に関する取り組みをまとめた計画です。走行データを集めるための国産の高度な運転支援車の普及や、安全性の評価、審査手続きの透明性・公平性の確保などを掲げています。

デジタル庁:今後の交通に関する計画

05

海外では、街中で無人タクシーを呼べる地域も

海外では、アプリなどで車を呼び、運転者のいない車両に乗って移動できる地域があります。こうした自動運転のタクシーは、一般に「ロボタクシー」と呼ばれます。

米国のWaymo(ウェイモ)やTesla(テスラ)、中国のBaidu(バイドゥ)などがサービスを広げています。利用できるエリアや乗車の条件は、事業者ごとに決められています。

2026年9月5日時点の主なサービス
事業者・地域利用できるサービス提供の範囲
ウェイモ
米国
9月1日にデンバーなど3都市で一般利用者の受け入れを開始。運転者なしの乗車提供は14都市に。
9月1日発表
都市ごとに運行エリアがあり、新しい地域では段階的に利用者を受け入れています。
テスラ
米国
無人タクシーのサービスに、ハンドルのない2人乗りの専用車両が加わっています。
公式利用案内
専用車両はオースティンの限定エリアで案内されています。
バイドゥ
中国・海外
「Apollo Go(アポロ・ゴー)」という自動運転の配車サービスを展開。8月にはドバイでも完全無人の商用運行開始を発表。
8月18日発表
ロンドンやスイスでは、公道での試験を進めています。

カメラで見るか、複数のセンサーを使うか

テスラは、カメラ映像をAIで読み取り、周囲の状況や運転判断につなげる技術を重視しています。ウェイモはカメラに加え、レーザーで距離や形を測る装置(LiDAR/ライダー)と、電波を使うレーダーを組み合わせています。

カメラ中心の構成には、搭載機器を抑えて普及させやすくする狙いがあります。複数のセンサーを使う方法には、異なる見え方で互いを補う狙いがあります。どちらの方法でも、安全に走れて、サービスを続けられる費用に収まることが求められます。

テスラのAI技術ウェイモのセンサー

06

テスラの車では、どこまで運転を任せられる?

自分の車で使う「運転支援」

テスラには、目的地への経路に沿って右左折や車線変更などを助ける「FSD(エフエスディー)」という機能があります。使える操作は、提供地域や車両、ソフトウェアの条件によって変わります。

※FSDはFull Self-Drivingの略。一般オーナー向けの名称に付く「Supervised(スーパーバイズド)」は「監督付き」という意味で、運転者による監視が必要なことを表しています。

一般向けのFSDはレベル2の運転支援です。車が多くの操作をしてくれても、運転者は前方や周囲を見続け、必要なときにすぐ操作できる状態で使います。眠ったり、スマートフォンに集中したりすることはできません。

テスラ公式:運転支援機能の説明

運転席の310が前方を確認し、AI-Rとポッケが同乗する運転支援のイメージ
車が操作を支援していても、レベル2では人が周囲を監視します。イラストは実際の車種・操作方法を示すものではありません。

乗客として使う「無人タクシー」

テスラは、アプリで車を呼んで移動する「Robotaxi(ロボタクシー)」というサービスも提供しています。こちらは利用者が乗客として乗り込み、事業者が管理するエリア内を移動します。

使われる車両には、テスラの乗用車「Model Y(モデル・ワイ)」と、ハンドルのない2人乗り専用車「Cybercab(サイバーキャブ)」があります。2026年9月5日時点の公式案内では、サイバーキャブはオースティンの限定エリアで利用でき、当初は乗客が車種を指定できない仕組みです。

ハンドルのない姿は未来的ですが、走れる地域や条件は決まっています。利用するときは、その時点の運行エリアや乗車案内を確認することになります。

テスラの配車サービスサイバーキャブの利用案内

安全基準への適合について調査中

米道路交通安全局は9月4日、サイバーキャブが安全基準に適合するとしたテスラの認証について調査を始めたと発表しました。違反の有無は、今後の調査で確認されます。米道路交通安全局の発表

日本のテスラでも、この運転支援を使える日は?

テスラ利用者の掲示板「テスカス」でも、FSDが日本の狭い道や見通しの悪い交差点でどう動くのか、いつ利用できるのかが話題になっています。今回確認した公式資料では、日本の一般オーナー向けの提供開始日は確定できませんでした。

オランダでは、人が監視する運転支援として承認されています。現地の車両認可を担う当局は、公道や試験場で審査した内容を説明しています。日本での提供についても、正式な案内が待たれます。

テスカス:日本の道路での動きテスカス:日本導入の話題オランダ当局:審査の説明

07

事故が起きたら、誰が責任を負うの?

ここでは日本の制度を説明します。事故当時に人と車がどのように対応していたか、何が原因だったかを調べて、責任が判断されます。

レベルが変わると、人に求められる役割も変わる
レベル事故時に確認されること
2:運転支援人が監視・操作する前提。脇見などの過失があれば、運転者の責任が問われます。装置の欠陥が原因なら、メーカーの責任も問題になります。
3:条件付き自動運転条件内ではシステムが運転しますが、人には引継ぎへの対応が必要です。交代要求に適切に応じられたか、車に欠陥がなかったかなどを調べます。
4:運転者なしのサービス乗客には運転操作を求めません。運行事業者の管理や整備、メーカーの車両・システムの欠陥などを調べます。

警察庁:運転者の役割国交省掲載資料:事故と責任の整理

けがをした人への賠償は、どう支払われる?

日本ではレベル4まで、車を管理し、その運行から利益を得る人・事業者などの「運行供用者」が、人身事故の賠償責任を負う枠組みが基本です。自動運転中の事故でも、この仕組みで被害者の救済を図ります。

例えば無人タクシーが人にけがをさせた場合、運行会社側の保険などで被害者への支払いを行い、車の欠陥が原因なら保険会社などがメーカーに負担を求めることが考えられます。被害者への支払い後も、事故の原因に応じて費用の負担を調整することがあります。

自賠責保険は人身事故が対象で、支払限度額があります。物損や限度額を超える部分は、任意保険なども関わります。賠償する責任、犯罪として処罰される責任、免許・運行許可などの行政処分は、それぞれ別に判断されます。海外では国・地域によって制度が異なります。

責任と被害者救済の考え方国交省:自賠責保険の対象・限度額

08

日本でも、運転できるかどうかで外出を諦めない暮らしへ

運転手不足でバスが減った町に移動手段が戻る。免許を返納した後も、病院や買い物へ行きやすくなる。自動運転が広がれば、日々の移動で困る場面を減らせるかもしれません。

サービスを続けるには、車両の整備や清掃、充電のほか、離れた場所から車の運行を支える人や、乗客の問い合わせに応じる人も必要です。政府の計画でも、こうした費用を含めて運営を成り立たせることが課題に挙がっています。政府ロードマップ

暮らしの足として広がるには、安全性に加えて、使いたい時間に呼べること、料金が高すぎないこと、困ったときに人の助けを受けられることも大切です。

日本でも、こんな移動が当たり前になるといい

免許を返納しても、好きな時間に買い物へ行ける。バスの本数が少ない町でも、病院や駅へ向かう足がある。家族が送迎できない日も、外出を諦めなくてよくなる。

海外では、その可能性を感じられるサービスが動き始めています。日本も限られた場所から一歩ずつ、安全性と使いやすさを確かめているところです。

身近な場所で使えるようになれば、自分で運転する人にも、運転できない人にも、出かける選択肢が増えます。日本でも、安心して日常の足に選べるようになるといいですね。

情報は2026年9月5日時点。運行地域・利用条件・事業計画は変わる場合があります。キャラクターの会話は解説のために構成したもので、掲示板投稿者の発言を再現したものではありません。画像はすべてオリジナルのイメージイラストです。

Xで共有する