① 事業で利益を出せているか
会社は2027年3月期に営業利益2000億円を計画しています。これは達成済みの数字ではありません。事業ごとの利益が改善し、その計画に近づいているかを確認します。
「大きな損失を出し切ったから、これから回復する」と考えてよいのでしょうか。会社の発表した数字から、確認すべきことを整理します。
ニデックの2026年3月期は、売上高が前期より3.9%増えた一方、営業損益は約5190億円の赤字でした。設備や買収した事業の価値を引き下げる「減損」が、大きな重荷になっています。
ただし、損失を計上しただけで事業が良くなるわけではありません。これから利益を出せるか、現金を生み出せるか、決算の数字を信頼できるか。この3つを確認したいところです。
工場や設備、買収した事業で、当初の想定ほど稼げないと分かったため、帳簿に載せている価値を下げることです。その差額を損失として計上します。会社が示した今回の減損額は、合計6321億円でした。
その金額の現金が、減損を計上した日にまとめて出ていくわけではありません。過去に使ったお金を、期待どおりには回収できないという見直しです。会社は、工場などの生産能力が需要を上回ったことや、価格競争、過大な投資、電気自動車市場の変化などを背景に挙げています。
設備の価値を下げても、注文が増えたり、製造コストが下がったりするとは限りません。また、減損の総額と営業赤字では集計範囲が異なるため、単純に差し引いて「本当は黒字」とは判断できません。
今回の問題は、直近1年の赤字だけではありません。会社の説明資料では、2021年3月期から2025年3月期までの5年間に計上した営業利益の合計も、次のように見直されています。営業利益は、商品やサービスを売る事業の損益を示す数字で、減損が含まれる場合もあります。
| 比較 | 金額 |
|---|---|
| 見直し前 | 8199億円 |
| 見直し後 | 4373億円 |
| 減少額 | 3826億円(約46.7%) |
減少率は、差額3826億円を見直し前の8199億円で割った計算です。減損に加え、会計処理の修正なども含まれます。2026年3月期の赤字とは別の期間なので、両方を足して「今年の損失」にしないよう注意が必要です。
2026年3月期は、事業で入った現金から投資で出た現金を差し引いた「フリーキャッシュフロー」が、会社公表値で約980億円のプラスでした。前期の約1368億円からは減っています。
利益と現金は、同じ動きをするとは限りません。今回は仕入先などへの未払い代金が増えたことも、現金を手元に残す方向に働きました。「現金がプラスだから、事業はもう回復した」とまでは言えません。
一方、資産全体に対する株主の持ち分の割合を示す指標は、前期の42.5%から25.6%へ低下しました。正式には「親会社所有者帰属持分比率」です。損失を受け止める財務上の余裕が縮小した点も、見ておく必要があります。
会社は2027年3月期に営業利益2000億円を計画しています。これは達成済みの数字ではありません。事業ごとの利益が改善し、その計画に近づいているかを確認します。
売った代金の回収が進み、必要な投資をした後にも現金が残るか。支払いが後にずれただけの改善と、事業で稼いだ改善を分けて見ます。
2026年3月期の監査意見は「不表明」です。監査人が決算全体について意見を出すための十分な証拠を得られなかった、という意味です。会社も数字がさらに修正される可能性を示しており、追加の訂正や監査の状況を確認する必要があります。
「大きな赤字が出たから、次は良くなる」と決めつけず、実際に稼ぐ力が戻ったかを追う。今回の決算を読むうえで、大切なのはその点です。