急落時も積立を続ける意味
10年データと買付口数で考える
下落は怖い一方、同額積立では多くの口数を買える局面。過去10年の指数例と計算で整理します。

「下落を喜ぶ必要はないけれど、積立の仕組みは知っておきたいですねぇ。」
先に結論
急落時に積立を続けると買付口数は増えます。ただし回復時期は読めないため、生活資金を確保し、無理のない金額で続けることが前提です。
このテーマを、もう一段深く考える
『急落時こそ積立を続けよう』という助言は正しい部分があります。ただし下がれば必ず戻る、積立なら損をしないという意味ではありません。積立が有利に働くには、その後の回復と十分な運用期間が必要です。
中級者が考えたいのは買付口数だけではなく、下落率と回復率の非対称性、投資開始直後と取り崩し直前の違い、生活資金との境界です。暴落を精神論で耐えるのではなく、続けられる設計を先に作ります。
積立は、安い月ほど多く買う仕組み
毎月3万円を投じる場合、基準価額が半分になれば同じ金額でおおむね2倍の口数を買えます。
| 基準価額(1万口) | 買える口数 | 考え方 |
|---|---|---|
| 15,000円 | 20,000口 | 30,000÷15,000×10,000 |
| 10,000円 | 30,000口 | 通常時 |
| 7,500円 | 40,000口 | 価格半減なら口数は2倍 |
過去10年の上昇は、一直線ではない
運用会社の指数例では、S&P500は10年で約4.2倍、8資産均等は約1.8倍でした。ただし途中には急落や数年単位の停滞があります。
一括投資
上昇局面では早く投じた資金が働きやすい反面、直後の急落をまともに受けます。
定額積立
購入時期を分け、買値を平準化します。上昇相場で必ず一括投資を上回る手法ではありません。
現金の役割
急落時に売らなくて済むよう、数か月分の生活費と近く使うお金は投資から分けます。
『続ける』と『放置する』は違う
積立を継続しても、年1回程度は投資先・コスト・目標額・生活状況を点検します。
ファンドの純資産が長く減り続ける、運用方針が変わる、同じ指数でも大幅に低コストの商品が出る、といった変化は確認対象です。
一方で、価格が下がったという理由だけで積立を止めると、安い時期の買付を逃す可能性があります。売却の判断は価格だけでなく、目的や資産配分が変わったかで考えます。
ここからが、中級者向けの深掘り
表面の数字を、実際の判断へつなげます。
下落率と必要な回復率は同じではない
100万円が20%下がると80万円です。元へ戻るには80万円から25%上がる必要があります。50%下がって50万円になると、必要な上昇率は100%です。下落が深いほど回復のハードルは急に高くなります。
この非対称性があるため、株式比率を高くしすぎないことが重要です。積立中に多く買えても、恐怖に耐えられず底付近で全売却すれば効果は残りません。
元へ戻るには+25%が必要です。
元へ戻るには約+42.9%が必要です。
元へ戻るには+100%が必要です。
若い積立期と、取り崩し期では暴落の意味が違う
積立開始から数年の急落は、残高がまだ小さく、その後の入金額が大きいため平均取得単価を下げやすい局面です。収入が続き、運用期間が長ければ回復を待てます。
一方、退職直前や取り崩し開始直後の急落は深刻です。残高が大きいうえ、値下がりした資産を生活費のために売ると、回復時に残る口数が減ります。同じ平均リターンでも、リターンが現れる順番で資産寿命が変わります。これがシーケンス・オブ・リターン・リスクです。
出口が近づいたら積立期と同じ株式比率を続けるのではなく、数年分の支出を現金や値動きの小さい資産へ移す方法を検討します。
暴落前に決める3段階の行動
第一段階は通常の調整です。下落が10〜15%程度なら積立を継続し、資産配分が目標からずれたかだけ確認します。第二段階は大幅下落です。追加投資をする場合も、一度に資金を使い切らず数回へ分けます。
第三段階は家計の悪化です。失業や収入減が起きたなら、投資理論より生活防衛を優先します。積立額の減額や一時停止は失敗ではありません。借金や生活資金不足を抱えて投資を続ける方が危険です。
相場の下落と自分の生活状況を分けて判断すると、ニュースの恐怖に振り回されにくくなります。
強気・弱気、両方の材料を見る
一つの結論へ寄せず、見方が変わる条件を並べます。
安い価格で口数を増やせる
長期の成長を前提にするなら、下落時の買付は回復後の収益へつながります。自動積立は感情的な停止を防ぎます。
回復までの時間は分からない
指数でも長期停滞は起こります。使う時期が近いお金や集中型商品では、同じ助言をそのまま使えません。
残りの運用期間と追加資金
10年以上の期間と安定収入がある人と、数年以内に取り崩す人では最適行動が変わります。
実際に資料で確認する項目
月報・運用報告書・決算説明資料を開いたら、ここを見ます。
- 01生活防衛資金
投資を売らずに暮らせる現金を何か月分持つか確認します。
- 02最大許容下落
金額と割合の両方で、どこまでなら積立を続けられるか書きます。
- 03資産配分のずれ
株式が目標比率を下回ったときだけリバランスするルールを決めます。
- 04使うまでの年数
5年以内に使う資金は株式中心から切り離します。
- 05商品固有の問題
市場全体の下落か、ファンドの償還・運用変更かを区別します。
ここまで読んだ人へ
急落を予測する必要はありません。予測できないからこそ、積立額・現金比率・リバランス条件を先に決めます。平常時に決めた仕組みは、相場が荒れたときの判断回数を減らします。
積立の本当の価値は、平均取得単価の計算だけではありません。長い投資期間を確保し、市場から退場しない行動を支える点にあります。
数字と一緒に確認したいこと
- 1
指数の過去10年の上昇は将来を保証しません。
- 2
積立でも損失は避けられず、回復まで長期間かかる場合があります。
- 3
収入が不安定なときに積立額を固定しすぎると、生活資金を圧迫します。
集計・計算について
10年倍率は三菱UFJアセットマネジメントがBloombergデータを基に示した各ベンチマークの例。実在ファンドの手数料・税金を含む運用実績ではありません。買付口数は手数料を除く単純計算です。
出典・確認先
数値は記載した基準日時点です。掲載内容は情報提供を目的とし、特定商品の購入・売却を勧めるものではありません。過去の実績や試算は将来の成果を保証しません。